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「問題をやみくもに解く」よりも「解くべき問題を見極める」

自己啓発

イシューからはじめよ

知的生産の「シンプルな本質」

著者:安宅 和人
出版社:英治出版
発売日:2010年11月24日

著者について

安宅 和人(あたか かずと)。慶應義塾大学環境情報学部教授。ヤフー株式会社CSO。データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経科学プログラムに入学。2001年春、学位取得(Ph.D.)。ポスドクを経て2001年末マッキンゼー復帰に伴い帰国。2008年よりヤフー。2017年7月よりCSO(現兼務)。2016年春より慶応義塾大学SFCにてデータドリブン時代の基礎教養について教える。2018年9月より現職。

本の概要

人生は何かを成し遂げるにはあまりにも短い。
だからこそ「問題をやみくもに解く」よりも「解くべき問題を見極める」ことから始める必要がある。

これが仕事の生産性を上げるための唯一の方法である。

多くの人は生産性を上げようとするとき、一心不乱に大量の仕事をしたり、一生懸命リサーチしたりして、なんとかバリューを上げようとしてしまう。だが、著者の安宅さんはこのようなアプローチを無駄が多すぎる「犬の道」だと痛烈に批判する。なぜなら、世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒はっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだからだ。

白黒はっきりさせる必要のない97か98の問題をやみくもに解いても生産性はあがらない。私たちがまずすべきなのは本当に白黒はっきりさせるべき問題を見極めること、つまり「イシューからはじめること」である。

本書は、単なる「仕事の効率を上げるライフハック」とは一線を画す。
本書は、本当に優れた知的生産を生み出す、思考法の本質である。

読んだ感想

『人生は短い。人生に与えられた時間は、束の間の虹のごとくである。』

この言葉は、古代ローマの哲学者であるセネカが著書『人生の短さについて』にて遺したものです。ある雨上がりの昼下がり、ふと空を見上げると美しい虹が出ていた。だがしばらく経ってまた空を見上げると、もうその美しい虹は跡形もなく消えていた。そんな儚く短い時間を、セネカは私たちの人生と重ねました。

終末期における緩和医療に携わる医師である大津秀一さんによると、多くの人は人生の最期に「もっと自分のやりたいことをすればよかった」「もっと美味しいものを食べればよかった」「もっと愛する人に”ありがとう”と伝えておけばよかった」という後悔を残して亡くなるそうです。人生において本当に成し遂げるべき問題に取り組まず、日々の瑣末な雑務に追われているうちに、人生という美しい虹は消えてしまう。人生に残された時間というものは、私たちが考えているよりもあっという間に過ぎ去ってしまうのかもしれません。

仕事でも全く同じことが言えます。一生懸命仕事をしているのに、なぜか成果があまり上がらない。どれだけ残業してもプロジェクトが納期に間に合わない。目の前にある問題をやみくもにこなしているうちに、タイムリミットが来てしまった。そんなふうに後悔してしまう人は多いでしょう。そんなとき、つい私たちは「努力と根性があれば報われる」とさらに働き詰めになってしまいがちですが、その戦い方ではいつまで経ってもバリューのある仕事をすることはできません。著者の安宅さんは「解の質を上げる」前に「解くべきイシューを見極めろ」と言っているのです。このシンプルな知的生産の本質を知った時、私はまさに目から鱗が落ちるような思いでした。

思い返してみれば、私の経験上、圧倒的な生産性を上げる人や組織はほぼ例外なく「イシューを見極めることから始める」ことを徹底しているように感じます。代表例として挙げられるのは、アイルランドの総合コンサルティング会社であるアクセンチュアのリサーチ技法ではないでしょうか。同社は、ビジネスの基本であるリサーチをする際に、ただ闇雲に「情報収集」をするのではなく、「ビジネスの意思決定を後押しするインサイト(=洞察)を抽出」することから始めます。そして物事を観察し、その本質や奥底にあるものを見抜いてから「答えるべき問い(イシュー)」を設定し、仮説を立案していくそうです。もちろん、こうしたイシューからはじめるリサーチ技法は、アクセンチュアに特有のものではなく、有名な戦略コンサルティング会社をはじめ、数々の世界で活躍している企業が実践していることです。

また、本書では「よいイシュー」を見極めるための条件の一つとして、「これまで信じられてきた常識を否定するような深い仮説がある」ことを挙げています。なぜならこういう「常識」が覆された時のインパクトは、ビジネスの場合は戦略や計画の根本的な見直しにつながる場合が多く、大きな戦略的アドバンテージにつながることが多いからです。

日本企業で優れたイシューを生み出し、これまでの常識を覆して業界構造そのものを変えてしまった例として相応しいのは、やはりトヨタの生産方式である「ジャスト・イン・タイム」ではないでしょうか。従来の自動車の生産ラインの考え方は「前工程が後工程へ物を供給する」ということでした。自動車の生産ライン上では、まず材料が加工され、部品となり、それらが組み合わさってユニット部品となり、最後の組み立てラインへ流れていく中で自動車が完成していきます。

しかしトヨタは「この工程を全く逆にしてはどうか」というこれまでの常識を覆すような仮説を立てました。つまり「後工程が前工程に、必要なものを必要なだけ取りに行く」と考えると「前工程は引き取られた分だけ製造すればいい」ということに気が付き、「ジャスト・イン・タイム」の実現を果たしたのです。

短い人生で何を成し遂げるのか。
短い仕事の時間でどれだけ生産性を上げられるのか。

その本質は、全てこの一冊に詰まっています。
まさに全ビジネスパーソンが一生に何度も読み返すべきバイブルです。

印象に残った言葉【本書から引用】

「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること 「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること(p.6)
世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒はっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。(p.30)
問題はまず「解く」ものだと考えられがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。(p.49)
「これがイシューだ」と思ったら、そのイシューの主語を確認してみよう。「誰にとって」という主語を変えても成り立つものは、まだイシューとしての見極めが甘い可能性がある。(p.64)
ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え ひとつ、聞き手は高度の知性をもつと想定せよ(p.218)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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