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人は感覚で買い、理屈で納得する

集客・マーケティング

シュガーマンのマーケティング30の法則

お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは

著者:ジョセフ・シュガーマン(著)、佐藤 昌弘(著)、石原 薫(翻訳)
出版社:フォレスト出版
発売日:2006年3月8日

著者について

ジョセフ・シュガーマン。シカゴ近郊出身。JS&Aグループ、ブルー・ブロッカー・コーポレーション、デルスター・パブリッシング会長。マイアミ大学電気工学科に3年半在籍したのち、1962年に米陸軍に召集される。その後、ドイツに渡り、陸軍の諜報機関を経てCIAに勤務。1971年、世界初の電卓を販売する通販会社JS&Aを設立。1986年、「ブルー・ブロッカー」ブランドのサングラスにシフトさせ、2000万本超を世界中で販売した。

本の概要

「今日、あなたは何を買っただろうか?」

この質問に答えるのは実に簡単だ。
自分が起床してから起こした行動をひとつひとつ思い出せばいいだけだ。

では、次の質問はどうだろうか?

「今日、あなたは“どうして”その商品を買ったのだろうか?」

きっと、答えに詰まってしまったはずだ。
もしくは買った理由を思い出すのに時間がかかったり、「なんとなく」や「いつも買っているから」という曖昧で不合理な理由でモノを買ってしまっていたことに気づくかもしれない。

どうしてそんなことが起こるのか。
それは、人間がモノを買う理由の95%は「無意識の決断」によるものだからだ。人は必ずしも合理的な理由をつけながらモノを買っているわけではなく、むしろ潜在意識や感覚が反応したからという不合理な理由でモノを買っている。
人は感覚で買い、理屈で納得するのだ。

本書では全米屈指のマーケターであるシュガーマンが、人の購買行動に直結する30の心理的トリガーを1つ1つ取り上げ、具体例とともにわかりやすく解説している。15年以上前に出版された本書が今でも読み継がれるのは、そこに時代を超えても色褪せることがない、マーケティングのエッセンスが凝縮されているからだ。

読んだ感想

「言葉は武器だ。」

秀逸なキャッチコピーは、いつも短くてシンプルです。
短いのに、いつまでも私たちの心を鷲掴みにし、離すことはありません。

例えば、コスモ石油のキャッチコピーである「ココロも満タンに」は非常にシンプルです。しかし石油だけでなくココロも満タンにするという、その先の「顧客満足」にまで励んでいる印象をたった8文字で伝えてくれます。

経営学者のピーター・ドラッカーは著書Management: Tasks, Responsibilities, Practicesの中で「the aim of marketing is to make selling superfluous(マーケティングの目的は営業を不要にすることだ)」という名言を残しています。ここから分かることは、マーケティング活動の核である「言葉の力」は営業を不要にするほどの凄まじい力を秘めているということです。

どんなに素晴らしい商品でも、伝え方をひとつ間違えればお客の購買活動にはつながりません。逆にたった一言、言い回しを変えるだけでお客の反応はガラリと変わります。そして本書ではそんな「言葉の力」を最大限に引き出す方法を、30の心理的トリガーを用いて分かりやすく解説しています。

本書の中で、特に私が印象に残っているのは「感覚が全ての決定の基盤」だということです。人は感覚的に物を買い、購買を納得するのに理屈を使います。

この心理的トリガーをうまく使っているのは、やはりAppleではないでしょうか。Appleの公式ホームページで「iPad Pro」などの具体的な製品を検索すると、まず真っ先に現れるのは「ぶっとんだパフォーマンス」などの刺さるキャッチコピーの数々と美しいヴィジュアルイメージです。ここで消費者は感情を揺さぶられ、血が騒ぐような情動に駆られます。そして本能的に「欲しい」という感情が湧き上がってきます。もしApple製品の値段が安ければ、多くの人はこの時点で衝動買いをしてしまうでしょう。

しかし、Apple製品は決して安くはありません。お客は湧き上がる情動を必死に抑えながら、「これを買って、本当に後悔しないか?」「なぜこれを買った方がいいのか?」という疑問を持ちます。そこでAppleはすかさず「50%速いCPUパフォーマンス」「40%速いグラフィックス」といった具合に比較可能で定量的な情報を提示し、理屈で納得させます。「なぜそれを買うべきか」という論理的理由を与えることで、お客の購買行動を正当化し納得させるのです。

短くシンプルなキャッチコピーでお客の本能に訴えかけ、論理的な言い訳を与えて納得させる。Appleに限らず、マーケティングが上手くいっている企業はこの心理的トリガーを活用していると感じました。

そしてもう一点、私が印象に残っているポイントは「正直さ」についてです。
悪意のある企業は「言葉の力」を悪用し、中身のない商品を売りつけようとします。自分達さえ儲かればいいと売り込みをしたり、お客の気持ちを無理やり煽るような広告を打ち出すのです。しかしシュガーマンは、「言葉の力」を最大限に引き出せたとしても、それで顧客を騙すことはできないと言っています。なぜなら消費者は売り手が思っている以上に賢く、嘘と本当を見抜くのに長けているからです。

私はこのシュガーマンの主張はもっともだと感じました。これは、消費者の立場になってみればわかることです。例えば、私がインターネットで魅力的な広告を見つけて、実際にそのサービスにお金を払ったとします。しかし、実際のサービスはとてもクオリティが低く、お粗末な仕事しかしてくれなかったらどうでしょうか。きっと私は「騙された」とか「もう二度と利用したくない」と思うはずです。期待していたぶん、それを裏切られた時の失望感ははかり知れません。

しかも今はインターネットの時代です。悪い口コミはSNSに拡散され、瞬く間に広まっていきます。するとその業者のブランド力や信用力は傷つき、もう誰も商品やサービスを買ってくれなくなってしまうかもしれません。仮に短期的に儲けられたとしても、長期的には必ず損をします。福沢諭吉は著書『学問のすゝめ』の中で「人望とは実際の力量で得られるものではもとよりないし、また財産が多くあるからといって得られるものでもない。ただ、その人の活発な知性の働きと、正直な心という徳をもって、次第に獲得していくものなのだ。」という言葉を残しています。人望や信用力なくして商売は成り立ちません。やはり何よりも大切なことは「正直さ」だと思います。

印象に残った言葉【本書から引用】

人が誠実かどうかは驚くほどはっきりお客に伝わる。(p.68)
購買決定をする際、お客は誰もが権威に頼りたがる。その分野の専門家とされる人や企業から商品を買うことができれば、お客にとって大きな価値となる。(p.85)
第1に、人は感覚で買い、理屈で納得すること。第2に、理屈は「なぜこれを買った方がいいの?」という無言の疑問に対する答えだということだ。(p.107〜108)
「Keep It Stupid and Simple」(何事もバカでいい。しかも単純に。)(p.188)
広告や販売で一番影響力のあるもの、つまり最も重要な心理的トリガーを1つ選べと言われたら、私は「正直さ」を選ぶ。(p.262)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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